2016/09/03

アメリカ8月雇用統計(2016年)は非農業雇用+15.1万人で9月利上げは不透明に

米8月雇用統計が9月2日に発表されました。

非農業部門雇用者数 +15.1万人(市場予想+18.0万人。前月分は+27.5万人、前々月分は+27.1万人に修正)

失業率 4.9%(市場予想4.8%)

非農業部門雇用者数の推移は、

米非農業部門雇用者数の推移のグラフ2015年9月~2016年8月
9月10月11月12月1月2月3月4月5月6月7月8月
+14.9+29.5+28.0+27.1+16.8+23.3+18.6+14.4+2.4+27.1+27.5+15.1
単位:万人

ジャクソンホール公演後、フィッシャーFRB副議長が「8月雇用統計がFOMCの決定に影響へ」「イエレンFRB議長の発言は9月利上げの可能性と整合」と発言したため、8月雇用統計は今まで以上に注目を集めていました。

結果は、非農業部門雇用者数が市場予想+18.0万人に対し+15.1万人と下振れでした。ただ、失業率が5%を切る完全雇用に近い水準の中、以前イエレンFRB議長が「非農業部門雇用者数が毎月+10万人程度でも労働力への新規参入者を吸収できる」としていたことや、9月1日にタカ派のメスター・クリーブランド連銀総裁が「毎月7.5-15万人の雇用増が失業率の安定を維持するだろう」と述べていたことを考慮すると、+15.1万人でもまずまずではないかというマーケットの見方があるようです。

また、季節調整の問題で毎年8月非農業部門雇用者数は低めに出て後で上方修正されることが多いと言われ、上方修正分を考えると堅調といえる可能性が高いという見方もあるようです。

非農業部門雇用者数の民間の内訳と政府機関合計は、

項目6月7月8月
民間合計+23.8+22.5+12.6
財生産小計-0.5+1.1-2.4
建設業-0.6+1.1-0.6
製造業+0.8+0.6-1.4
サービス業小計+24.3+21.4+15.0
卸売業+0.13+0.14+0.39
小売業+2.22+1.11+1.51
輸送業-0.65+1.51+1.49
情報業+4.1-0.4+0.4
金融業+1.7+1.9+1.5
専門職+4.8+8.0+2.2
派遣業+1.57+1.25-0.31
教育・医療業+5.2+4.4+3.9
接客業+5.3+4.5+2.9
政府合計+3.3+5.0+2.5
総計+27.1+27.5+15.1
単位:万人
※重複やその他等あるので各項目を合計しても総計にはなりません。

建設業・製造業が減速し、マイナス転換しました。
卸売業・小売業・情報業が前月より伸びました。
輸送業・金融業・専門職・派遣業・教育医療業・接客業は前月より減速しました。
政府部門は前月より減速しました。


失業率は市場予想4.8%に対し4.9%で、前月と同値でした。
労働参加率も前月と同値の62.8%でした。

平均賃金は、前月の修正値25.70$から0.1%上昇し、25.73$でした。
平均賃金の前月の伸びが前月比+0.3%だったのに対し、今月は+0.1%と鈍化したことで、9月FOMCでの利上げは難しくなったとみる向きが多いようです。

本人の意に反して職探しをあきらめた人や、正規雇用を望みながらパートタイムで働く人を含めたU6失業率は、前月と同値の9.7%でした。

失業率の推移は、

米失業率の推移のグラフ2015年9月~2016年8月
9月10月11月12月1月2月3月4月5月6月7月8月
5.15.05.05.04.94.95.05.04.74.94.94.9
単位:%


8月雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想+18.0万人にとどかない+15.1万人でした。前述のように、失業率が完全雇用に近い水準ではこの程度でもまずまずだという見方があり、最近のFRB関係者らの9月FOMCでの利上げの可能性に言及した多くの発言を踏まえると、8月雇用統計は9月利上げの障壁となるものではなく、9月利上げの可能性は残ったという見方があるようです。

一方で、平均賃金の伸びの鈍化に注目して、9月利上げは難しくなったとみる向きも多いようです。

マーケットでは、年内1回の利上げを見込み、12月FOMCで利上げされるだろうという予想が多いようで、9月FOMCでの利上げ予想はそれほど多くないようです。

最近のFOMC参加者の発言によると、年内2回の利上げもありうるというフィッシャーFRB副議長(FOMC投票権有ハト派)や、年内1回以上の利上げに前向き・あるいは利上げが近いというイエレンFRB議長(FOMC投票権有ハト派)、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁(FOMC投票権有ハト派)、ブラード・セントルイス連銀総裁(FOMC投票権有タカ派)、ジョージ・カンザスシティ連銀総裁(FOMC投票権有タカ派)、メスター・クリーブランド連銀総裁(FOMC投票権有タカ派)、ロックハート・アトランタ連銀総裁(FOMC投票権無タカ派)、ラッカー・リッチモンド連銀総裁(FOMC投票権無タカ派)ら利上げ前向き派が多く、9月か12月、場合によっては2回の利上げが行われる可能性があると思われます。

しかし、前述のようにマーケットでは、年内1回の利上げは織り込んでいるものの、年内2回は無理という予想が多く、年内利上げなしの予想も一部で見られ、FOMC参加者らのスタンスとかなり違いがありそうです。

9月利上げを占う上で注目された8月雇用統計ですが、強くもないが弱くもないという結果で、マーケットでは不透明感が漂っているようです。カプラン・ダラス連銀総裁(FOMC投票権無)は「FOMCの決定は単一の雇用統計だけに基づかない」と8月25日に述べていますが、9月20~21日に開催される9月FOMCまでの他の米経済指標にも目を配る必要がありそうです。